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【排出量取引制度(GX-ETS)②】排出枠の割当て(各論①)排出枠の割当量の調整、ベンチマークによる割当水準
2026.01.27
GX推進法が改正され、2026年度から、日本において排出量取引制度(GX-ETS)が本格的にスタートします。
本ブログでは、基準期間中や制度開始後の事業所の新設、廃止等による排出枠の調整についてのルールや、ベンチマーク方式による割当水準についてご説明いたします。
(なお、概要、対象事業者、登録確認機関、排出枠の割当て(総論)につきましては、【排出量取引制度(GX-ETS)①:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2026/17929.html】を、排出枠の割当て(各論②)グランドファザリングによる割当水準、勘案事項(過去の削減努力、リーケージリスク等)につきましては、【排出量取引制度(GX-ETS)③:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2026/17931.html】を、割当ての方法、排出実績量の報告等、排出量の取引、償却、未償却相当負担金については、【排出量取引制度(GX-ETS)④:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2026/17932.html】を、それぞれご参照願います。)
3-4 基準期間に構造変化等が生じた場合の基準活動量、基準排出量の算定
3-4-1 基準期間中の事業所の新設
新設があった年度の翌年度以降の年度平均として算出します。
但し、最終年度に新設があった場合には、当該年度の活動量・排出量実績を1年分に換算して算出します(中間整理38頁、39頁)。
3-4-2 基準期間中の事業所の廃止
廃止された事業所は、基準活動量・排出量の算定対象から除外されます(中間整理38頁)。
3-4-3 特定非常災害の指定、激甚災害の指定、災害救助法の適用を受けた地域にある事業所
各災害の指定期間内に属する事業年度の当該事業所の排出量・活動量について、その実績を用いずに、前年度と同じとみなして3か年度平均を算出することが認められます(中間整理38頁、40頁)。
3-4-4 法令に基づく保安検査対応による活動量・排出量の減少
高圧ガス保安法に基づく保安検査に伴い、設備の稼働を停止した事業所については、検査が完了した月以前の5か月間を除く期間の稼働実績に基づいて活動量・排出量の平均値を算出することが認められます。具体的には、検査対応があった年度の活動量・排出量を、当該期間を除く月の平均×12か月として算定した上で、3年度平均を算出します(中間整理38頁、41頁)。
3-5 制度開始後の割当年度に構造変化等が生じた場合の割当量の調整
事業所単位で後述3-5-1~3-5-3の変動が生じた場合に割当量が調整されます。但し、一つの敷地内にベンチマーク対象設備、グランドファザリング対象設備が併存する場合は、それぞれを一つの事業所とみなして調整されます(中間整理45頁)。
また、エネルギー使用量が1,500kl未満の事業所については、報告等の手続・執行の簡素化の観点から、個別に活動量の変動による調整は行われません。但し、これらの事業所について、小規模事業所群として一体とみなし、事業所群全体としての活動量が±7.5%の変動が生じた場合(後述3-5-3参照)には、割当量が調整されます(中間整理46頁)。
3-5-1 事業所の新設
新設年度の活動量を1年分に換算し、翌年度以降の割当量が決定されます。また、新設年度の活動量に応じた排出枠が翌年度に追加されます(中間整理47頁)。
事業所が新設された年度をT年度とすると、各割当年度の割当量は以下のとおりとなります(中間整理47~48頁)。
T年度の割当量:ゼロ
(T+1)年度の割当量:
- ベンチマーク方式:T年度の排出に係る割当て+(T+1)年度分の割当て
=T年度の活動量実績×T年度ベンチマーク水準
+調整後の基準活動量(※)×(T+1)年度ベンチマーク水準
(※)T年度活動量/T年度稼働日数×365 - グランドファザリング方式:T年度の排出に係る割当て+(T+1)年度分の割当て
=T年度の排出量実績
+調整後の基準排出量(※)×(1-グランドファザリング削減率)
(※)T年度排出量/T年度稼働日数×365
(T+2)年度の割当量 - ベンチマーク方式:調整後の基準活動量×(T+2)年度ベンチマーク水準
- グランドファザリング方式:調整後の基準排出量×(1-グランドファザリング削減率×2)

(中間整理47頁)
3-5-2 事業所の廃止
廃止された事業所については、翌年度以降割当ては行われません。また、廃止年度に過大に割り当てた分は、翌年度に事業者全体の割当量から控除されます(中間整理47頁)。
3-5-3 活動量の変動
3-5-3-1 調整措置
活動量が過去2年度平均で基準年度から±7.5%以上増加・減少した場合には、翌年度の基準活動量を直近2年度平均に更新して割当てが行われます。また、前述3-5-1、3-5-2と同様に、変動が生じた過去2年度分についても、新たな基準と過去の基準の差分を翌年度割当量に追加又は控除されます(中間整理50~52頁)。

(中間整理50頁)
但し、高圧ガス保安法に基づく法定点検や災害等の影響により±7.5%以上の活動量の変動が生じた場合でも、特定の年度のみ一時的に活動量が減少するものであるため、基準活動量の更新の対象とはなりません。ただ、影響が生じた年度においては、割当量=活動量実績×ベンチマーク水準となるよう調整されます(中間整理55~56頁)。
3-5-3-2 グランドファザリングや燃料ベンチマークが適用される場合の調整措置
グランドファザリングについては、割当量の算定式においてベンチマークのような活動量の定義が与えられていないところ、事業活動の規模との関連性や第三者による確認可能性から、燃料使用量を活動量とします(非エネルギー起源CO2は、CO2排出量を活動量として調整されます。)。ただ、省エネ努力によって燃料使用量が減少した場合に割当量が減じられることがないよう、燃料使用量の減少がエネルギー消費原単位(※)の改善によるものである場合には、割当量は減じられません。燃料ベンチマーク(後述3-7-6参照)の適用対象についても同様の取扱いがなされます。
(※)エネルギー消費原単位は、業種横断的な指標として、「グランドファザリング・燃料ベンチマークによる割当てを受ける事業所全体のエネルギー使用量(一次エネルギーベース)÷当該事業所における売上高」を基本とします。
活動量(燃料使用量)が7.5%以上減少した場合でも、エネルギー消費原単位改善率(基準年度比)が7.5%以上であると証明できる場合は、割当量は減じられません。他方、活動量(燃料使用量)が7.5%以上増加した場合において、エネルギー消費原単位増加率(基準年度比)が7.5%未満であると証明できる場合、割当量は追加されます(基準排出量・活動量を直近2年平均とします。)(中間整理53頁)。
3-6 合併、事業譲渡・分割の際の取扱い
3-6-1 合併
存続会社・新設会社は、消滅会社における合併実行年度の排出実績量に相当する排出枠の保有義務を負います(44条1項、中間整理76頁)。また、翌年度以降の割当てにおいては、存続会社・新設会社が消滅会社の基準活動量・基準排出量を承継します(中間整理76頁)。
3-6-2 事業譲渡・分割
契約内容に応じて対象事業にかかる排出枠が一体的に承継されるため、実行年度における割当ては、原則として譲渡人・分割法人に対して行われ(44条2項)、翌年度以降の割当てにおいては、譲受人・分割先が譲渡人・分割法人における基準活動量・基準排出量を承継したとして割当量が算出されます(中間整理75頁)。
3-7 ベンチマークによる割当水準
3-7-1 業種ごとの検討事項
ベンチマーク指標は、特定の製品の生産量等を分母、当該製品の生産プロセスにおいて発生する排出量を分子とした排出原単位として定義されます。このため、各検討対象業種において、①活動量の定義及び②対象プロセスの範囲について定める必要があります(中間整理61頁)。

(中間整理61頁)
3-7-2 品種構成によるベンチマーク指標の補正
業種によっては、各社の排出削減努力によらない品種・製品構成によって各社の排出原単位に差が生じている場合があります。この場合、品種・製品構成による排出原単位の差をならすために、各社の品種・製品構成を同じと仮定するための補正を行います(中間整理62頁)。

(中間整理62頁)
3-7-3 直接排出比率に応じた補正
業種によっては、自家用発電設備を保有するか否か等により、エネルギー使用量に占める購入電力・蒸気の有無によって排出原単位にばらつきが生じています。このため、そのような業種においては、ベンチマーク指標を直接排出量・間接排出量の合計で策定し、割当量は、ベンチマーク指標に事業者ごとの直接排出量の割合を乗じて決定します(中間整理63頁)。
補正の適用対象となる業種は、自家発電設備の利用状況等について、事業者間で一定の差異が生じている業種のうち、①事業者間の公平性の確保、②執行の簡素化、等の観点から業種ごとに事業所管大臣が判断します。
また、ベンチマーク指標の算定方法は、以下のとおりであり(なお、間接排出量は、全国平均排出係数を用います。)、

割当量の算定方法は、以下のとおりとなります(中間整理64頁)。


(中間整理63頁)
3-7-4 業界ごとのベンチマーク水準の考え方
省エネ法等の取組を踏まえると、ある時点のトップランナー水準(上位15%程度(上位●%水準とは、事業者数ベースのパーセンタイル値ではなく、活動量による重みづけを行って算出します。))に業種全体として到達するまで10年程度要します。このため、基準年度における標準的な排出原単位を上位50%水準とすると、5年後の2030年度時点のベンチマーク水準は、上位15%と上位50%の中間である上位32.5%と考えられます。2030年度より前の各年度のベンチマーク水準は、基準年度(上位50%)と2030年度(上位32.5%)を線形補完して算出します(中間整理65頁)。
(例)上位50%:1.50t-CO2/t、上位32.5%:1.20t-CO2/tの場合
|
年度 |
ベンチマーク水準 (t-CO2/t-製品) |
|
基準年度 |
1.50(上位50%相当) |
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2026年度 |
1.44 |
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2027年度 |
1.38 |
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2028年度 |
1.32 |
|
2029年度 |
1.26 |
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2030年度 |
1.20(上位32.5%相当) |
3-7-5 上位と中位の乖離が大きいベンチマーク業種の割当水準
グランドファザリング対象業種との間で、制度上求められる削減率に著しい差が生じないよう、制度開始当初の5年間に限り、2030年度のベンチマーク水準を業種ごとの上位32.5%と上位50%×0.915(※)のいずれか大きい方とした上で、各年度の水準を算出します(中間整理66頁)。
(※)グランドファザリング対象業種において2030年度時点で求められる削減率(後述3-8-1参照)から算出(1-0.017×5=0.915)
3-7-6 燃料ベンチマーク
製造工程が複雑・特殊であって、製品生産量当たり排出原単位の指標をベンチマークとすることが困難な場合に割当量を決定するための方法として、複数の分野において燃料ベンチマークが適用されます(中間整理54頁)。

3-7-7 副生燃料について勘案すべき事項
生産活動に伴い不可避的に生じる副生燃料の有効利用は、排出削減の観点から重要ですが、副生燃料は一般に、通常の燃料と比較して燃料使用量当たりの炭素量が大きい場合が多く、また、燃焼効率が低いため、相対的に多くの燃料を消費します。
副生燃料の有効利用を阻害しないために、副生燃料を通常の燃料に代替した場合の排出量との差を考慮して割当てを行う必要があります。
ベンチマークにおいて副生燃料と通常の燃料で差が出る要因は次のとおりです(中間整理67頁)。

①排出係数の差:同じ燃料投入量でも、副生燃料のほうが排出量が大きくなる。
②燃焼効率の差:燃焼効率のよい燃料では、副生燃料に比べて燃料投入量が少なくなる。
副生燃料を通常の燃料に代替した場合の排出量は以下のとおりとなります。
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このため、副生燃料利用時の排出量と通常の燃料利用時の排出量の差は、以下のとおりとなります(中間整理68頁)。

副生燃料の利用に係る排出については、消費側のプロセスに対して、通常の燃料との排出量の差分をグランドファザリング方式で割り当てられます。なお、燃料ベンチマーク対象プロセス(前述3-7-6参照)においては、燃料使用量を活動量として割当てを行うことから、燃焼効率の差は考慮せず、副生燃料とその他の燃料を切り分けた上で、副生燃料について別途割り当てられます。適用されるグランドファザリング削減率については、副生燃料の削減手段が通常の化石燃料と比べて限定されているため、後述3-8-2のプロセス由来排出のグランドファザリング削減率を適用します。
- 消費側が製品ベンチマーク対象の場合:製品ベンチマーク×活動量
+基準年度副生燃料調達量(※1)×(副生燃料の排出係数-業種平均排出係数×0.85(※2))×(1-グランドファザリング削減率×経過年数) - 消費側が燃料ベンチマーク対象の場合:燃料ベンチマーク×副生燃料を除く燃料使用量
+基準年度副生燃料調達量×副生燃料の排出係数×(1-グランドファザリング削減率×経過年数)
※1 上式による割当ては、製品ベンチマーク対象プロセスから発生した副生燃料は対象とせず、他の工程で発生した副生燃料を利用する場合にのみ行います。また、一般に副生燃料の定義に該当する場合でも、輸出入が行われるなど、通常の燃料と同様に広く流通しているとみなせるものについては対象とされません。
※2 国内発電事業者のLNG火力と副生燃料混焼設備との発電効率の比較により算出されたものです。
なお、高炉製鉄業やカーボンブラック製造業のように、ベンチマークの分子となる排出量に他のプロセスに供給する副生燃料の燃焼に係る排出も含める場合は、割当量から基準年度の副生燃料供給量にグランドファザリング削減率を乗じた量を控除します(中間整理69頁)。
以上
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