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【排出量取引制度(GX-ETS)④】割当ての方法、排出実績量の報告等、排出量の取引、償却、未償却相当負担金
2026.01.27
GX推進法が改正され、2026年度から、日本において排出量取引制度(GX-ETS)が本格的にスタートします。
本ブログでは、割当ての方法、排出実績量の報告等、排出量の取引、償却、未償却相当負担金についてご説明いたします。
(なお、概要、対象事業者、登録確認機関、排出枠の割当て(総論)につきましては、【排出量取引制度(GX-ETS)①:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2026/17929.html】を、排出枠の割当て(各論①)排出枠の割当量の調整、ベンチマークによる割当水準につきましては、【排出量取引制度(GX-ETS)②:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2026/17930.html】を、排出枠の割当て(各論②)グランドファザリングによる割当水準、勘案事項(過去の削減努力、リーケージリスク等)につきましては、【排出量取引制度(GX-ETS)③:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2026/17931.html】を、それぞれご参照願います。)
4 割当ての方法
4-1 法人等保有口座、機構取引口座
経済産業大臣は、排出枠口座簿を作成し、排出枠の取得、保有及び移転(以下「排出枠の管理」といいます。)のため、法人等保有口座と機構取引口座を開設します(45条1項)。法人等保有口座は、内国法人等(国内に本店等を有する法人、脱炭素成長型投資事業者である個人をいいます。)が自己のために排出枠の管理を行うための口座をいい、機構取引口座は、脱炭素成長型経済構造移行推進機構(以下「GX推進機構」といいます。)が、売買取引を行うことができる者(排出枠取引市場における排出枠の売買取引を行うことができる者(113条3項1号))のために排出枠の取得・移転(以下「振替」といいます。)を行うための口座をいいます。
排出枠の管理を行おうとする内国法人等は、排出枠口座簿に、経済産業大臣による法人等保有口座の開設を受けなければならなりません(48条1項)。法人等保有口座は、排出枠の管理を行おうとする一の内国法人等につき一つだけ開設を受けることができ(同条2項)、開設を受けるには申請書・添付書類を経産大臣に提出しなければなりません(48条3項・4項)。
4-2 排出枠の増加の記録
経済産業大臣は、脱炭素成長型投資事業者に排出枠を無償で割り当てます(34条1項、前述3-2参照)が、この割当ては、法人等保有口座に排出枠の増加の記録をすることにより行われます(34条3項)。記録後、経済産業大臣は、その旨脱炭素成長型投資事業者に通知します(34条4項)。割当てに先立ち、経済産業大臣は、事業活動に係る事業所管大臣に協議しなければなりません(34条5項)。
5 排出実績量の報告等
5-1 排出実績量の報告
脱炭素成長型投資事業者は、割当年度(4月1日~3月31日、33条1項)の翌年度において、割当年度の排出実績量(二酸化炭素の排出量の実績(32条2項3号))等を経済産業大臣、環境大臣及び事業所管大臣に報告します(35条1項)。あらかじめ、排出実績量が実施指針で定める排出実績量の算定方法により適切に算定されていることにつき、登録確認機関の確認(その水準については、前述2参照)を受け(同条2項、施行令5条)、確認の結果を記載した報告書を添付します(35条3項、33条3項)。
5-2 排出実績量の算定の考え方
GX-ETS制度では、排出実績量は、①直接排出したエネルギー起源(燃料利用に係る)二酸化炭素排出量に、②直接排出した非エネルギー起源(工業プロセスにおける化学反応等に由来する二酸化炭素排出量)を加えたものから、③クレジット無効化量(J-クレジット・二国間クレジット(JCMクレジット)の無効化量)を控除したものとし、算定・報告を求める排出の範囲については、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(昭和54年法律第49号、「省エネ法」)・地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)における規定等を踏まえて定められます(中間整理15頁)。
クレジットの使用上限は、実排出量の10%ですが、排出枠の需給に及ぼす影響等について継続的に点検し、必要な場合には上限の見直しを検討していくとしています(中間整理18頁)。
5-3 排出量算定方法の類型
排出量算定方法として、次の算定方法が認められます。
① 活動量:活動量(燃料の使用量等)×排出係数
② 物質収支:(原料中の炭素量-製品中の炭素量)×44/12
③ 実測(濃度×流量):二酸化炭素濃度×排ガス等流量
④ その他
モデル計算:化学式等で理論的に算定
固定数量×時間:機械仕様値×機械稼働時間×稼働日数
算定に必要な証憑類の入手ができず、①~④の方法による算定ができない場合、過去の排出実績や同業他社等のデータから、保守的な方法により排出量を推計する方法も定められます(中間整理16頁)。
5-4 排出実績量に相当する排出枠の量の通知
経済産業大臣は、35条1項に従い報告(前述5-1参照)した脱炭素成長型投資事業者に対し、排出実績量に相当する排出枠の量を通知します(36条1項)。報告の内容が不適切である等必要がある場合、経済産業大臣は、その調査に基づき、保有すべき排出枠の量を決定し、当該脱炭素成長型投資事業者に通知します(36条2項)。
5-5 排出枠の保有
脱炭素成長型投資事業者は、前述5-4で通知された量の排出枠を割当年度の翌年度の1月31日(以下「償却日」といいます。)に、その法人等保有口座で保有しなければなりません(36条3項)。
5-6 移行計画
脱炭素成長型投資事業者は、毎年度、その事業活動に伴う二酸化炭素の排出量の削減に関する目標等、GX投資その他の事業活動に関する計画(移行計画)を作成し、経済産業大臣及び事業所管大臣に提出しなければなりません(73条1項)。この移行計画のうち、2030年度の排出量の見込みや排出実績等は公表されます(同条2項、中間整理108頁)。
6 排出枠の取引
排出枠は、排出枠を保有する者の間で、取引の対象とすることができます(38条1項、投機的取引は認められません(同条2項))。
6-1 排出枠取引市場
排出枠取引市場は、GX推進機構が設置、運営する(111条1項6号イ)もので、2027年秋ごろに開設予定です(中間整理110頁)。業務開始の際、①排出枠の売買取引を行うことができる者、②売買取引の方法、③公正な売買取引を確保するために必要な措置、④売買取引の決済、に関する各事項等について業務方法書を作成し、経済産業大臣の認可を受けます(113条)。また、経済産業大臣は、GX推進機構が排出枠取引市場の設置・運営等の排出枠取引の機会の提供に関する業務(111条1項6号)を実施する際に従うべき基準(排出枠取引機会提供実施基準)を定め、公表します(114条1項・2項)。
6-2 参考上限取引価格
経済産業大臣は、毎年度、年度開始前に、二酸化炭素の排出量1トンに相当する排出枠の取引価格の上限の算定の基礎となる価格(参考上限取引価格)を定めます(39条1項)。
この参考上限取引価格に関しては、後述7のように、脱炭素成長型投資事業者の排出実績量が保有する排出枠を上回った場合に、当該差分に参考上限取引価格×1.1を乗じて得られる金額(未償却相当負担金)を経済産業大臣が徴収するとされています(41条1項)。つまり、参考上限取引価格は、排出枠価格が高騰したとしても、排出実績量が排出枠を上回ってしまった脱炭素成長型投資事業者は、予め定められた参考上限取引価格を基に算出された未償却相当負担金を支払えば足りるという機能を有します(第7回排出量取引制度小委(2025年12月19日)資料3の2頁)。いわば排出枠の取引価格の上限に当たります。
参考上限取引価格を定めるに当たっては、産業・国民生活への影響、脱炭素成長型経済構造への移行(GX)の状況、エネルギーの需給に関する施策との整合性等を勘案します(39条1項)。
経済産業大臣は、脱炭素成長型投資事業者のGX投資の状況や、排出枠取引市場での排出枠の取引の状況等の事情を勘案し、必要があれば、翌年度以降の参考上限取引価格を併せて定めることができます(39条2項)。また、エネルギー需給を取り巻く環境、物価等の経済事情に著しい変更が生じ、又は生ずるおそれがある場合で、特に必要があるときは、参考上限取引価格を改定することができます(同条3項)。経済産業大臣は、参考上限取引価格を定め、又は改定しようとするときは、あらかじめ、産業構造審議会の意見を聴かなければなりません(同条4項)。
2026年度の参考上限取引価格は、燃料転換コスト(石炭火力とLNG火力の運転費用が同等になる水準の炭素価格として算出)の2016年以降10年間の時系列データの中央値から4,300円/トンとし、2027年度から2030年度まで参考上限取引価格は、前年度の価格に当該年度の物価の変動指数の見通しの数値に1.03を加えたものを乗じた価格を基礎として、毎年度定めるとしています(排出量取引制度小委「令和8年度の参考上限取引価格及び調整基準取引価格に関する意見」(2025年12月19日)(以下「参考上限取引価格等意見」といいます。)、第7回排出量取引制度小委資料3の10頁、11頁)。
6-3 調整基準取引価格
経産大臣は、毎年度、年度開始前に調整基準取引価格を定めます(116条1項、前述6-2と同様に、翌年度以降の調整基準取引価格を併せて定めることができます(116条3項、39条2項))。調整基準取引価格は、排出枠の売買取引の価格の平均額(平均売買取引価格)が、一定期間以上継続して調整基準取引価格を下回った場合、脱炭素成長型投資事業者のGX投資等の事業活動に及ぼす影響を緩和のため、売買取引の価格を調整することが必要となると認められる排出枠の取引価格として経済産業大臣が定めるもので(116条2項)、いわば排出枠の取引価格の下限に当たります。
GX推進機構は、平均売買取引価格が調整基準取引価格を下回る場合は、排出枠の取引価格の調整のために、排出枠を買い入れることができます(111条1項7号、117条1項)。なお、経済産業大臣は、GX推進機構が排出枠買入れの業務を実施するに当たってGX推進機構が従うべき基準(調整実施基準)を定め(115条1項)、GX推進機構は、買い入れた排出枠を調整実施基準に従って、脱炭素成長型投資事業者に売り渡します(117条4項)。
調整基準取引価格を定めるに当たっては、GX投資等の事業活動を誘導する排出枠の取引価格の水準、二酸化炭素の排出に関する国内外の経済動向等の事情を勘案します(116条2項)。
2026年度の調整基準取引価格は、省エネの対策費用として省エネJ-クレジットの価格を参照し、2024年度時点の取引価格(昨今の高騰前の価格)を踏まえ1,700円/トンとし、2027年度から2030年度まで参考上限取引価格は、前年度の価格に当該年度の物価の変動指数の見通しの数値に1.03を加えたものを乗じた価格を基礎として、毎年度定めるとしています(参考上限取引価格等意見、第7回排出量取引制度小委資料3の9頁、11頁)
6-4 みなし排出枠保有
①平均売買取引価格(前述6-3参照)が参考上限取引価格を一定期間(1年を超えない範囲で経済産業省令で定める期間)以上の間継続して上回る場合、②排出枠取引市場において売渡しを希望する排出枠(その価格が参考上限取引価格を以下のものに限る)の数量が著しく少ない場合、③災害等やむを得ない事由により排出枠の取引を行うことが困難となる場合(施行令6条)において、排出枠の償却(後述7参照)に支障を生ずることが明らかであり、次に定める措置を講ずる必要があるときは、経済産業大臣はその旨告示します(40条1項)。
その措置とは、経済産業大臣から通知(前述5-4参照)された排出枠の量が、割り当てられた排出枠の量を上回る量を限度として、排出枠の量に参考上限取引価格を乗じて得た額の負担金を政府に納付することを認めるものです(40条2項)。
この納付があったときは、排出枠の償却において、脱炭素成長型投資事業者が納付額を参考上限取引価格で除して得た量の排出枠を保有しているものとみなされます(同条3項)。
7 排出枠の償却、未償却相当負担金
経済産業大臣は、償却日(前述5-5参照)に、排出枠口座簿において、脱炭素成長型投資事業者がその法人等保有口座において保有する排出枠の量の範囲内で、経済産業大臣から通知された量の排出枠の減少の記録をして、当該排出枠を消滅させる、つまり通知された量の排出枠について償却します(37条1項)。
経済産業大臣は、償却日の翌日(割当年度の翌年度の2月1日)以降に、当該割当年度における経済産業大臣から通知された量の排出枠の償却を受けていない脱炭素成長型投資事業者から、通知された量の排出枠のうちその償却をしていない量に参考上限取引価格を乗じて得た額に1.1を乗じて得た額を未償却相当負担金として、経済産業大臣が徴収します(41条1項)。
以上
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