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外国人による不動産取得をめぐる新たな規制の動き
2026.03.09
今回の法令ニュースでは、政府が検討を進めている、外国人による不動産取得をめぐる新たな規制の動きについて取り上げます。
外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策
政府は、令和7年11月、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議を設置し、同会議は、令和8年1月23日、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を公表しました。この対応策は、出入国・在留管理等の適正化・外国人受入れ、外国人制度の適正化等、土地取得等のルールの在り方を含む国土の適切な利用及び管理に向けた取組み、外国人が日本社会に円滑に適応するための取組みなど、幅広い施策を内容としています。
以下では、国土の適切な利用及び管理に向けた取組みについて概説します。
国土の適切な利用及び管理に向けた取組
政府によれば、外国人による土地の取得等には、安全保障上の懸念や、不動産価格の上昇に対する国民の不安があるとされています。たとえば、「外国人が水源地を買い占めて地下水を採取しているのではないか」、「外国人が森林を取得し、違法な開発を行っているのではないか」、「外国人による農地取得は食料安全保障の観点から問題はないのか」、「外国人の短期売買により、マンション価格が高騰しているのではないか」、「離島の土地や防衛施設周辺の不動産を外国人が取得しているが、安全保障上の懸念はないのか」などの声が政府に寄せられているとのことです。
この点、上記「総合的対応策」によれば、一部の外国人による、我が国の法やルールを逸脱する行為・制度の不適正利用について、不安や不公平感に対処する必要があるところ、現状では、日本の土地所有者等の実態がよく分からないとのことです。そこで、「総合的対応策」は、国土の適切な利用及び管理に向けた取組において、①土地所有等情報の透明性向上、②土地所有等情報の公開性確保、③マンションの取引実態の把握、④地下水採取に関する実態把握、⑤外国人の土地取得等のルールの在り方等を盛り込みました。
具体的な取り組みですが、①土地所有等情報の透明性向上の中心については、不動産登記において国籍等を把握するための改正が予定されています。②土地所有等情報の公開性確保に関しては、国民に対して適切に公開すべき土地所有等情報を集約したデータベースとして不動産ベース・レジストリの整備が進められています。
不動産価格の高騰に対する懸念について
上記の③マンションの取引実態の把握に関しては、国交省は、令和7年11月25日、「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果を公表」し、特に三大都市圏における短期売買の状況を分析しています。短期売買とは、購入後1年以内の売買を意味し、価格高騰に寄与すると考えられています。上記資料によれば、首都圏を中心に、新築マンションの短期売買の増大傾向がみられるとしています(図表1~4参照)。
【図表1】新築マンションの短期売買の状況(3大都市圏とその都府県)

※国交省の「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析について」より抜粋 以下も同じ。
【図表2】国外に住所がある者による新築マンション取得の状況(3大都市圏とその都府県)

【図表3】東京23区における短期売買の動向(住所の所在地別)

【図表4】東京23区で新築マンションを取得した国外に住所がある者の国・地域について

政府によれば、新築マンションの短期売買(購入後1年以内の売買)が増加している事実は認められるが、それが外国人によるものなのかは分かっていないとされており、外国人による不動産取引の実態把握が必要とされています。
地下水採取に関する実態把握
この問題の背景にあるのは、SNSなどの発信から、外国人が水源地を買い占めて地下水を採取しているのではないかというものです。この点、林野庁が実施する「外国法人等による森林取得に関する調査」においては、外国法人等が取得した森林で、取水や地下水採取を目的とした開発等の事例は報告されていないとのことです。また、外国人等による地下水採取の事例を把握している地方公共団体は12団体49件であるところ、具体的な支障事例は報告されていないとのことです。政府としては、継続的に、情報収集・分析を行い、事実関係を確認するとともに、必要ン対策をとるとされています。
外国人の土地取得等のルールの在り方等
現行法では、外国人の土地取得に関して、安全保障の観点からの利用規制は設けられていますが、土地等の事前取得規制は存在しません。この点、安全保障の観点からの土地取得等のルールについて、対象者、規制内容、対象となる土地等を検討し、規制の骨格を令和8年にとりまとめることが予定されています。
なお、土地の利用規制の例としては、重要土地等調査法があります。この法律は、防衛関係施設、海上保安庁の施設、原子力関係施設及び特定の空港等の施設の周辺区域について、取引の事前届出、利用規制、国による買取り等を定めています。この点、内閣府は、「令和6年度重要施設周辺等における土地・建物の取得状況について」において、令和6年度中に売買等の契約による所有権の移転や建物の新築の登記により取得されたことが確認された土地・建物の集計結果を公表しています(図表5)。
【図表5】 (令和6年度)重要施設周辺等における土地・建物の取得状況について

※内閣府の資料により。なお、令和6年度と令和5年度では、調査の対象区域・期間が異なるため、一概に比較することはできないとされています。
まとめ
本項でご紹介した施策は、「総合的対応策」のほんの一部にすぎません。今後、外国人による不動産取得をめぐる新たな規制に関して、様々な施策が実現されることが想定されますので注意が必要となります。
以上
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