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大量保有報告制度の改正-上場子会社・上場関連会社を有する事業会社における対応
2026.04.17
はじめに
令和6年に成立した金融商品取引法等の改正により、2026年5月1日から新しい大量保有報告制度が施行されます。
金融機関等においては、同日の施行に向けて諸々の対応準備が進められているところですが、一方で事業会社においては必ずしも改正に向けた万全な準備ができていないというケースもあるように思われます。
大量保有報告制度は、5%超の上場株式等を有する者全般に対して適用されるルールですので、その適用対象は金融機関に限られません。特に上場子会社・上場関連会社を有する事業会社においては、今後、改正に向けた対応が必要となります。
そこで、本ブログでは、上場子会社・上場関連会社を有する事業会社において特に問題となりやすい「重要提案行為等」の開示について解説します。
(注)本ブログでは、わかりやすさを重視し、正確・厳密な法令用語その他の表記を用いていない部分があることをご了承ください。
大量保有報告制度の概要
大量保有報告制度は、大要以下のような規律を設けています。
① 上場株式等の保有割合が5%超となった場合には、その日から5営業日以内に大量保有報告書を提出しなければならない
② 上記①の後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合には、その日から5営業日以内に変更報告書を提出しなければならない
(注)保有割合の計算方法や機関投資家における特例については、本ブログでは説明を割愛します。
上場子会社・上場関連会社を有する事業会社は、通常、すでに大量保有報告書を提出していますので、2026年5月1日以後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合に、改正後の大量保有報告制度が適用されることとなります。
「重要提案行為等」の開示に関する規律の改正
改正後の大量保有報告制度では、大量保有報告書・変更報告書に「重要提案行為等」に関する具体的な内容を記載することが必要になりました。
改正前は多くの提出者が「重要提案行為等を行うことがある」といった抽象的な記載をしていましたが、改正後は、重要提案行為等を行う予定がある場合には、重要提案行為等の内容(例えば、重要提案行為等の具体的な内容、重要提案行為等を行う時期、重要提案行為等を行う条件、重要提案行為等の目的)についてできる限り具体的に記載することが必要となります。
「重要提案行為等」とは
重要提案行為等とは、以下の3つの要件を満たす行為を意味します。
A.発行者またはその子会社に対する「提案」行為であること
B.提案内容が金融商品取引法施行令14条の8の2第1項各号に掲げる事項に該当すること
C.提案行為が発行者の事業活動に重大な変更を加え、または重大な影響を及ぼすことを目的とすること
詳細は割愛しますが、上場子会社・上場関連会社(以下「上場子会社等」といいます。)を有する事業会社(以下「親会社等」といいます。)において問題となりやすいのは、親会社等が上場子会社等に対して役員を派遣する場面です。
親会社等が上場子会社等に対して、役員を派遣する行為(=自らが指名する者を上場子会社等の役員とすることを提案する行為)は、多くの場合、上記A~Cの要件を満たし、「重要提案行為等」に該当します。
もっとも、上場子会社等から、役員の派遣や紹介の要望を受け、これに応じる形で具体的な候補者を提案する場合には、通常、「重要提案行為等」に該当しないと考えられています。
ケーススタディ
では具体的な事例を基にして、どのような対応が必要となるのか見ていきましょう。
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【ケース1】 |
ケース1の場合、今後も同様の態様で派遣を継続する方針である限りにおいて、通常、「重要提案行為等」に該当しませんので、大量保有報告書や変更報告書に「重要提案行為等」に関する記載をする必要はありません。
もっとも、当該方針を変更し、上場子会社等の意向にかかわらず親会社等から役員を派遣することとした場合には、その日から5営業日以内に変更報告書を提出し、ケース2と同様の「重要提案行為等」に関する記載をする必要があります。
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【ケース2】 |
ケース2の場合、今後も同様の態様で派遣を継続する方針であれば、「重要提案行為等」に該当するため、大量保有報告書や変更報告書に「重要提案行為等」に関する記載をする必要があります。資本業務提携契約等に基づき親会社等が役員を派遣する権利を有する場合も、このケース2に該当することが多いでしょう。
この場合には、2026年5月1日以後に提出する大量保有報告書や変更報告書に、重要提案行為等の内容(例えば、重要提案行為等の具体的な内容、重要提案行為等を行う時期、重要提案行為等を行う条件、重要提案行為等の目的)を記載する必要があります。
例えば、グループ会社の管理を目的として定常的に役員を派遣しているような場合には、「提出者グループ全体の管理の一環として、発行者の事業内容・財務状況を監督することを目的として、役員の改選時期等に、提出者が指名する者●名を発行者の役員とすることを提案する予定です。」などと記載することが考えられます。
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【ケース3】 |
これまでルーティン的に親会社等から上場子会社等に役員を派遣していて、そのことが両社間で暗黙の了解となっているような場合、当該派遣が上場子会社等からの要望に基づくものなのか否か(=ケース1・2のいずれであるのか)が判別しづらいケースも多いと思います。
この場合の対応策としては、もし仮に上場子会社等から何らの要望や調整がない場合であっても、役員派遣を継続する方針か否かで判別することがよいでしょう。
もし当該場合も役員派遣を継続する方針であれば、ケース2と同様の「重要提案行為等」に関する記載をすべきと整理できます。
もし当該場合に役員派遣を継続する方針でないのであれば、ケース1と同様、「重要提案行為等」に関する記載をする必要はないと整理できます。もっとも、当該方針を変更し、上場子会社等の意向にかかわらず親会社等から役員を派遣することとした場合には、その日から5営業日以内に変更報告書を提出し、ケース2と同様の「重要提案行為等」に関する記載をする必要があります。

おわりに
近時、法務省の法制審議会会社法制部会から、大量保有報告制度違反があった場合の議決権停止制度(に等しい制度)の創設が中間試案として示されるなど、大量保有報告制度の遵守状況やその実効性確保の在り方について注目が集まっています。
資本市場の透明性を確保するためには、投資家のみならず、上場株式等を有する事業会社においても大量保有報告制度を遵守していくことが今後更に重要になりますので、ぜひ改正に向けた対応を進めてください。
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