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【障害福祉】「ビジネスと人権」に関する行動計画の改定
2026.10.09
2025年12月、「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」が改定され、「ビジネスと人権」の観点から日本が取り組むべき8つの優先分野に関する今後の政府の取組方針や各種施策が明示されるとともに、日本企業が、その規模、業種等にかかわらず、国際的に認められた人権等を尊重し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」といいます。)やその他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権尊重の取組に最大限努めることへの期待が表明されました。
今回は、この改定版行動計画(「『ビジネスと人権』に関する行動計画(改定版)」、以下「新計画」といいます。)の概要について、障害福祉に関わる内容を中心にご説明します。
行動計画策定の背景
2020年10月、国際的な「ビジネスと人権」の理念に関する意識の高まりを受け、国内企業への「ビジネスと人権」に関する理解の促進と意識の向上を図るとともに、企業及び企業間での取組強化を促すことを目的として「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」(以下「旧計画」といいます。)が策定されました。
旧計画策定以降の主な成果は以下のとおりです。
- 「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」策定(2022年9月)
- 「公共調達における人権配慮について」政府方針決定(2023年4月)
- 「実務参照資料」公表(2023年4月)
- 「食品企業向け人権尊重の取組のための手引き」公表(2023年12月)
- 「労働におけるビジネスと人権チェックブック」公表(2024年10月)
2024年5月のビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議(以下「連絡会議」といいます。)において旧計画の改定作業の着手が承認され、ビジネスと人権に関する行動計画推進円卓会議(以下「円卓会議」といいます。)及びビジネスと人権に関する行動計画推進作業部会(以下「作業部会」といいます。)におけるステークホルダーとの対話、パブリックコメントを経て、2025年12月24日、連絡会議にて新計画が承認されました。
行動計画の策定及び実施を通じ目指すもの
旧計画においては、行動計画の策定及び実施の目的について、以下の4つが挙げられており、新計画においても維持されています。
⑴ 国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進
⑵ 「ビジネスと人権」関連政策に係る一貫性の確保
⑶ 日本企業の国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上
⑷ SDGsの達成への貢献
新計画においては、企業による人権尊重の取組を、企業の持続的・安定的な成長に寄与し得る行動としても位置付けていくことが重要であるとされています。
8つの優先分野への再編
旧計画では、指導原則の「人権を保護する国家の義務」、「人権を尊重する企業の責任」及び「救済へのアクセス」の3つの柱の分類を踏まえ、関連する取組を3つの観点から分類し整理していました。
新計画においては、従来の点・線としての施策を横断的に面として捉え直し、以下の8つの優先分野に再編し、優先分野ごとに「課題認識及びこれまでの取組」と「取組の方向性及び具体的施策の例」を明示しています。優先分野ごとの取組の方向性の概要は以下のとおりです。

障害者のための施策推進
8つの優先分野のうちの一つが、「誰一人取り残さない」ための施策推進です。この施策推進においては、取組の方向性として、ライツホルダーの状況を考慮した制度設計・運用及び見直しの実施が求められており、このライツホルダーの一類型として「障害者」が挙げられています。「障害者」のための施策推進における「課題認識及びこれまでの取組」と「取組の方向性及び具体的施策の例」の概要は以下のとおりです。
【課題認識及びこれまでの取組】
障害者基本法の理念に基づき、日本政府は障害の有無にかかわらず共生できる社会の実現に取り組んできた。2024年4月施行の改正障害者差別解消法により、事業者にも合理的配慮の提供が義務化された。しかし、情報・物理的アクセシビリティの欠如、採用・昇進における差別、ハラスメント、不当解雇等の人権侵害リスクは依然として存在し、特に精神障害・発達障害等の見えにくい障害への理解や配慮には課題が残る。
障害者が能力を発揮できる環境整備は、質の高い自立生活の実現に重要であり、政府は就業機会の確保や支援人材の育成を進めている。障害者雇用促進法により、事業主には差別禁止・合理的配慮提供が義務付けられ、2023年4月施行の改正法では、事業主の責務として職業能力開発・向上に関する措置も明確化された。ハローワークは労使双方からの相談を受け付け、都道府県労働局は紛争解決の援助や調停制度を提供している。こうした取組の結果、雇用障害者数は22年連続で増加し、優良中小事業主の認定数も増加している。
【取組の方向性及び具体的施策の例】
①「誰一人取り残さない」ための人権保護の視点に立った制度設計・運用及び見直しの実施
- 障害者差別解消法・障害者雇用促進法等の改正に伴う各種施策
- 地域関係機関が連携した雇用前後の一貫した就業支援
- 雇用・就業施策と福祉施策を組み合わせた生活両面の一体的支援(年金・諸手当・税制優遇・各種支援制度)
- 「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画」に基づく「心のバリアフリー」推進
- 法テラスにおける合理的配慮提供の取組推進
- 職場環境整備に係る企業向け助成金の支給
②人権リスク特定・人権尊重に向けた情報・好事例の提供
- 障害者差別解消法・障害者雇用促進法等の改正に伴う各種施策
政府から企業への期待表明
新計画では、国際スタンダードと日本企業が進出している国が定める法令との差(ガバナンス・ギャップ)にも配慮しながら、人権リスクはどこにでも存在することを前提に、その規模、業種等にかかわらず、すべての日本企業が国際的に認められた人権を尊重し、人権尊重の取組に最大限努めることへの期待が表明されています。具体的には、以下の3つのステップが企業に求められています。
ステップ1:人権方針の策定・公表
●5つの要件:
①経営陣の承認、②専門的情報・知見の活用
③従業員・取引先への期待明記
④一般公開・周知、⑤事業方針・手続への反映
ステップ2:人権デュー・ディリジェンス(DD)の実施
●継続的プロセス:特定・評価→防止・軽減→実効性評価→情報開示
ステップ3:救済
●苦情処理メカニズムの確立・活用
同メカニズムの実効性要件:正当性、利用可能性、予測可能性、公平性、透明性、
権利適合性、持続的学習源、エンゲージメント
各ステップにおいては、旧計画策定以降の主な成果としてご説明した、ガイドライン、実務参照資料、各種手引きのほか、企業の取組に関する好事例集等のリソースの活用が推奨されています。
今後のスケジュールと実施体制
新計画は2026年度から開始され、新計画の公表から5年を目途に改定の必要性が判断されることとなっています。毎年、連絡会議において各府省庁の実施状況を確認し、その際には、可能な限り、客観的評価指標を用いるように努めることが求められています。ステークホルダーとの対話の機会として、円卓会議、作業部会は継続して行われます。
動きがありましたら、今後も随時本ブログにおいてご紹介いたします。
※参考ウェブサイト
ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議|内閣官房ホームページ
法務省:「ビジネスと人権」に関する行動計画について
ビジネスと人権|外務省
ビジネスと人権~責任あるバリューチェーンに向けて~ (METI/経済産業省)
ビジネスと人権~責任あるグローバル・サプライチェーンに向けて~|厚生労働省
ビジネスと人権:農林水産省
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