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【米国】【司法制度】ロバーツ合衆国最高裁長官、ニューマン判事事件を第11巡回区へ移送
2026.10.15
ロバーツ合衆国最高裁長官、ニューマン判事事件を第11巡回区へ移送
日本の知財関係者にはあまり知られていないかもしれないが、米国では著名な連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)のポーリン・ニューマン判事をめぐる問題が、大きな転機を迎えた。2026年8月19日、ジョン・ロバーツ合衆国最高裁長官は、ニューマン判事に対する申立ておよび関連申立てをCAFCから第11巡回区司法評議会へ移送することを決定した。これにより、同判事が3年以上にわたり求めてきた「中立的な審査機関」による審理が実現することになった。
もっとも、この移送によってニューマン判事が直ちに職務へ復帰するわけではない。停職措置は引き続き有効であり、第11巡回区が審理を行う間も継続する。それでも、停職処分を決定したCAFCではなく、外部の裁判官によって審査が行われることになった意義は大きい。ニューマン判事は一貫して、同僚判事による調査・判断は利益相反を生じさせ、適正手続の観点から問題があると主張してきた。
背景
ニューマン判事をめぐる手続は、2023年3月に司法行為・障害法(Judicial Conduct and Disability Act)に基づいて開始された。同年後半、CAFCは同判事の職務遂行能力に懸念があるとして、事件の担当を停止した。ニューマン判事は、神経心理学的検査を命じられたが、これを拒否し、自ら選任した医師による評価を提出した。司法評議会はそれらを十分な代替とは認めず、その後も停職措置を繰り返し更新してきた。
ニューマン判事は連邦裁判所でこれらの手続に異議を申し立てたが、認められなかった。2025年8月のD.C.巡回区判決は、この事件がデュー・プロセスや憲法構造に関する重要な問題を提起していることを指摘したものの、連邦最高裁は2026年6月に上告受理を拒否した。一方、この問題は議会の関心も集めており、連邦巡回区控訴裁判所判事関する紛争案件を他の巡回区へ移送することを求める法案も提出されている。
事件の重要性
米国以外の読者にとって、99歳の判事がなお法廷に立つために争い続けていることは不思議に映るかもしれない。しかし、その背景には連邦裁判官に保障された終身在職権がある。米国憲法第3条は、連邦裁判官が「善良な行状(good Behaviour)」の下で職を保持すると規定しており、辞任、退職、または弾劾による罷免がない限り、原則として終身在職が保障される。
ニューマン判事は、毎年更新される無期限の停職措置は、名称こそ違うものの事実上の罷免に等しいと主張している。これに対し司法評議会は、同判事が調査への協力を拒否したため措置は正当であると反論している。ただし、司法行為・障害法は一時的な職務制限を認める一方で、裁判官を罷免する権限までは与えていない。このため本件は、一時的措置がどの時点で終身在職権の保障に抵触するのかという重要な憲法問題を提起している。
コメント
私はかつてランダル・レイダー判事の下で客員研究員を務めていた際、ニューマン判事と接する機会に恵まれた。最も印象に残っているのは、若い法律家に対する真摯な関心と、裁判官就任前の企業経験に裏付けられた実務的なイノベーション理解である。彼女の元ロークラークには現在、知財法を教える著名な大学教授も多く、私が参加する米国の法学教授のメーリングリストでも、この問題をめぐる議論が続いていた。職務遂行能力をめぐる論争についてどのような立場を取るにせよ、彼女の独立した視点が2023年以来CAFCの合議体から失われていることは確かである。
今後の展望
1984年にレーガン大統領によって任命されたニューマン判事は、連邦巡回区で最も長く在職している判事である。今後の焦点は、第11巡回区司法評議会が停職措置およびその前提となる障害手続をどのように扱うかにある。3年以上にわたり独立した審査機関による判断を求めてきた同判事にとって、今回の移送は重要な手続上の勝利といえるが、なお職務復帰を意味するものではない。年齢を考えても、迅速かつ公正な解決が望まれる。
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