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【中国】【特許】審査基準改正案の再公表-2特許期間調整
2022.11.02
特許期間調整に関する改正内容
中国国家知的財産局(CNIPA)は2022年10月31日、専利審査基準の改正案(パブリックコメント再募集稿)を公表しました。先日の概要速報に続き、本稿では、今般公表された審査基準改正案及び既に公表されている専利法実施細則改正案の内容に基づいて、新たに導入される予定の特許期間調整制度についてご紹介します。
なお、今回のパブリックコメント募集期間は、2022年12月15日までとなっており、知的財産局の公表文書によれば、専利法実施細則及び審査基準ともに年内の正式改正を目指しているとのことです。
特許期間調整制度の概要
特許期間調整制度は、2021年6月1日より試行された改正専利法第42条第2項に以下のように規定されたことにより導入された制度です。
専利法 第42条第2項:
発明専利の出願日から起算して満4年、かつ実体審査請求日から起算して満3年後に発明専利権が付与された場合、国務院専利行政部門は、専利権者の請求に応じて、発明専利の権利付与プロセスにおける不合理的な遅延について専利権存続期間の補償を与えるが、出願人に起因する不合理な遅延は除く。
これは、米国のPTA(Patent Term Adjustment)及び日本の特許権の存続期間の延長制度(特許法第67条第2-3項)に対応する制度です。中国知的財産局(上記条文では「国務院専利行政部門」と記載)は、審査遅延により登録の遅れた特許権に対し、審査のために登録が遅れた日数に相当する期間だけ、特許権存続期間の延長を認めることが規定されています。なお、審査基準改正案によれば、いわゆる特実同日出願制度を利用して出願された特許は、本制度による調整の対象になりません。
特許期間調整の申請方法
この特許期間調整の申請方法は、改正法施行時の暫定弁法に以下のように定められています。
改正専利法の施行に関する関連審査業務処理の暫定弁法 第5条:
2021年6月1日以降に登録公告された特許について、特許権者は、改正専利法第42条第2項に従って、特許権付与の公告日より3か月以内に、紙申請の形式で特許権存続期間の補償請求を提出し、続いて国家知的財産局が発行した費用納付通知書に従って関連費用を納付することができる。国家知的財産局は、新たに改正される専利法実施細則の施行後に、上記請求を審査する。
上記の通り、特許期間の調整を受けるには、特許権の設定登録の日から3カ月以内に出願人が申請書を提出する必要があります。審査基準改正案によれば、共同出願の場合は代表者が申請することができます。また、代理人がいる場合には代理人が申請を提出しなければなりません。
延長を求める期間の計算方法
(1)基準日の設定
専利法第42条第2項によれば、「発明専利の出願日から起算して満4年、かつ実体審査請求日から起算して満3年後に発明専利権が付与された」場合に特許期間調整が適用されます。ここでいう「出願日」は、「優先日」ではなく「出願日」を意味します(専利法実施細則第11条)。ただし、審査基準改正案によれば、PCT国際出願から中国国内移行した出願の「出願日」は中国国内移行日、分割出願の「出願日」は分割出願の出願日を指します。また、出願公開前に実体審査請求がなされた場合の「実体審査請求日」は、出願公開日を指すと規定されています。
上記の規定に従って各出願の「出願日」から起算して満4年の日、及び「実体審査請求日」から満3年の日をそれぞれ求め、そのいずれか遅い方の日を「基準日」とします。この基準日より後に特許の設定登録がなされた場合、基準日から設定登録の日までの日数が、「延長を求める期間」として認められる可能性のある最大の日数となります。
なお、審査基準改正案によれば、手続きの中断、保全措置、行政訴訟などによって引き起こされた遅延は、特許期間調整の対象外とされています。これらの状況が発生した特許の扱いは明確にされていませんが、特許期間調整の申請そのものが認められない可能性があります。
(2)控除されるべき期間について
専利法第42条第2項では、特許期間調整の際に、「出願人に起因する不合理な遅延は除く」と規定されています。審査基準改正案によれば、以下の期間は、出願人に起因する不合理な遅延期間とされ、その部分については、特許期間の延長が認められません。
1)庁通知への応答期限を延長した場合の本来の期限日から実際の応答日までの期間
2)遅延審査を請求した場合の実際の遅延期間
3)引用による補充により生じた遅延期間
4)権利回復措置を請求した場合の本来の期限日から権利回復を認める通知の発行日までの期間
5)優先日から30カ月以内に国内移行したPCT出願について出願人が早期処理を請求しなかった場合の国内移行日から優先日の30カ月後の日までの期間
よって、「延長を求める期間」の算定には、まず上記(1)の基準日を決定して、基準日から設定登録の日までの日数を求め、そこから(2)で規定された控除されるべき期間を減算します。ここで、減算後の日数が0又はマイナスになる場合、特許期間調整の申請はできないことになります。
特許期間調整申請の審査
2021年6月の改正専利法施行時に知的財産局から公表された特許期間調整の申請用紙には、特許番号、発明の名称、及び特許権者を記入する欄のみが設けられ、調整を求める期間の日数を記入する欄はありません。ただし、審査基準が正式に改正され、調整期間の計算方法が確立した際には、特許権者が自ら調整期間を計算し、その日数を記入して申請を行うようになる可能性もあります。
審査基準改正案によれば、申請は知的財産局で審査され、期間調整の対象外と判断された場合には、特許権者に少なくとも1回の意見陳述・補正の機会が与えられます。期間調整が認められた場合、申請者に延長される日数を含む通知書が発行され、その旨が登記簿に登記され、公告されます。審査基準改正案を読む限りでは、特許期間調整が認められた場合の日数について不服を申し立てる機会は設けられていないようです。
コメント
改正専利法施行以降、特許期間調整の申請が可能となりましたが、過渡弁法の規定により、その審査は専利法実施細則の改正まで延期されています。申請期限が設定登録の日から3カ月であるため、現状では、多くの特許権者が、算定方法が未確定の手探りの状態で、特許期間調整が受けられる可能性がある特許について、とりあえず申請書を提出している状況です。これらの申請は全て未審査の状態で知的財産局内に積滞しており、専利法実施細則・審査基準の改正後に改めて審査が開始される予定です。
また、特許期間調整のオフィシャルフィーについても、暫定弁法により費用納付が必要なことは理解できるものの、どのタイミングでどのようなオフィシャルフィーが発生するのかは、明らかになっていません。特許期間調整の申請そのものにオフィシャルフィーがかかるのか、延長された特許期間に対する年金の扱いはどうなるか等も、金額を含めて不明な状況です。出願人の関心が非常に高い本制度について、早期に実施細則・審査基準の改正内容が確定し、運用が明確になることが望まれます。
ただし、近年、中国知的財産局の特許審査期間は短縮の一途をたどっており、2021年の平均審査期間は18.5カ月でした。この点を考えると、特許期間調整の対象となる特許は、今後かなり限定されていくことが予想されます。
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