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第21回知的財産分科会(2026年5月14日)の審議について
2026.05.15
はじめに
2026年5月14日、産業構造審議会第21回知的財産分科会が開催され、「稼ぐ力のための知的財産」等について検討が行われました。本稿では、同分科会の委員を拝命している松山智恵とオブザーバーとして参加している齋藤俊より、審議の内容について簡単にご紹介いたします。
議論の内容
第21回知的財産分科会では、以下2つの議題について議論が行われました。
- 稼ぐ力につながる知的財産~知的財産を経営戦略に~
- 各小委員会の報告
このうち、1つ目の議題は、知的財産と経営戦略を結びつける画期的かつ実務的な議題でした。そこで、本稿では、この1つ目の議題に焦点を当ててご紹介いたします。
「稼ぐ力につながる知的財産~知的財産を経営戦略に~」の議題については、特許庁から、資料1「稼ぐ力につながる知的財産~知的財産を経営戦略に~」と題する資料(以下「資料1」といいます。)を用いて、説明が行われました。具体的には、1.「稼ぐ力のための知的財産」、及び2.「『稼ぐ力のための知的財産』の実現に向けた特許庁の取組」について説明がありました。
1. 「稼ぐ力のための知的財産」
まず、日本の産業の現状について説明があり、「日本企業は、新製品・サービスを生み出せていない」、成長投資が少ないといった分析がございました。また、知的財産について、日本成長戦略の分野横断的課題の1つとして、「新技術立国・競争力強化」が取り上げられていることと、民間企業による好事例の紹介がありました。
次に、「IPインテリジェンス」とその具体例の説明がありました。「IPインテリジェンス」とは、「特許情報分析に、マーケット情報分析なども加えることによって、経営層がより確度の高い意思決定を行えるようにすること」を意味します(資料1、18頁)。これまで、特許庁では「IPランドスケープ」という用語が使われていましたが、外国で「IPランドスケープ」という用語が通じないこと、及びIPインテリジェンスという用語はより判断に踏み込む印象があることから、今回、「IPランドスケープ」ではなく、「IPインテリジェンス」という新しい用語が使われることになったとのことです。
その後、「有価証券報告書において知財投資に関する開示を充実させた企業は、株式市場での評価が高くなるとの分析結果あり」という点について説明がありました(資料1、22頁)。
そして、(1)のまとめとして、以下のスライドの紹介がありました(資料1、23頁)。

特許庁からは、このスライドを示しつつ、知的財産の「独占排他機能」、「知財をコアにビジネスモデル構築」すること、「知財の活用を含めた価値創造ストーリーの開示」が重要である等の説明がありました。このスライドは、本議題のテーマである、稼ぐ力のための知的財産の役割について、非常によくまとまっており、企業の知的財産戦略を検討するにあたっても参考になると考えられます。
2. 「『稼ぐ力のための知的財産』の実現に向けた特許庁の取組」
この論点について、特許庁から、主に以下の内容についてご説明がありました。
(1)審査に関する取組
- 特許庁がトップクラスのスピードで審査を行っていること
- 「事業戦略対応まとめ審査」という必要に応じて審査官が事業内容に沿った補正方針のアドバイスも行う審査を行っていること
- 日本企業の海外展開支援として世界に特許審査ハイウェイ(PPH)ネットワークを拡大していること
- 標準化対応のコンサルテーション審査(仮称)を今後創設すること
- スタートアップ対応早期審査を行っていること
(2)知財経営推進のための取組
- 経営において知的財産を活用することの重要性の普及啓発等を目的として、企業トップと特許庁長官との対話を2025年度に17回実施したこと
- コーポレートガバナンス・コード改訂案の原則4-1において、知的財産等の無形資産への投資等についても明記される案が作成されたこと
- 関係機関等と連携して中小企業等に対して支援を行っていること
(3)海外展開支援のための取組
- 日本企業が海外でも知的財産権を円滑かつ予見性高く取得し活用しやすい環境を構築するため、様々な国際的取組を行っていること
(4)AIトランスフォーメーション(AX)への対応
- 「近年のAIの急速な発展を踏まえ、AIの活用方針や留意点などを含む、JPO AIビジョンを策定中」であり、それを踏まえてアクションプランをまとめること
- 特許、意匠、商標審査におけるAIの導入
3. 質疑応答
本議題については、委員の間で活発な意見交換が行われました。その他のご説明や、委員による議論の詳細は、特許庁のホームページで今後公開される議事録をご参照いただければ幸いです。
おわりに
上記のとおり、今回の知的財産分科会では、議題1「稼ぐ力につながる知的財産~知的財産を経営戦略に~」について、踏み込んだ議論が行われました。特許庁の資料に表れているとおり、知的財産を企業の「稼ぐ力」にどうつなげていくのかという点は、企業の経営において今後も引き続き重要なトピックになると考えられます。
TMI総合法律事務所では、知的財産権の出願・活用など、知的財産に関する様々なご相談に対応させていただいております。また、以下のように、様々な技術分野の特許の分析(IPランドスケープの実践)も行っておりますので、知的財産と経営戦略についてご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、こちらの記事もお読みいただけますと幸いです。
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