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第50回特許制度小委員会の審議について
2024.11.18
はじめに
令和6年11月6日、産業構造審議会知的財産分科会第50回特許制度小委員会が開催され、特許制度等の見直しについて検討が行われました。本稿では、特許制度小委員会の委員を拝命している松山智恵とオブザーバーとして参加している齋藤俊より、第50回特許制度小委員会における審議の内容について、簡単にご紹介いたします。
議論の内容
第50回特許制度小委員会では、以下2つの議題について議論が行われました。
1.国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護について |
今回の小委員会の議論のほとんどは、このうちの1.に関するものでした。すなわち、実施行為の一部が国外で行われている場合の適切な権利保護の在り方(なお、実施行為の全部が国外で行われている場合も含めて議論すべきではないかとの意見もありました。)についての議論を行いましたので、以下1.を中心にご説明させていただきます。
以前ブログでご紹介したとおり、令和6年3月から6月にかけて、有識者を構成員とする特許庁政策推進懇談会において非公開で行われた議論の報告書に相当する「特許庁政策推進懇談会中間整理」(以下「本中間整理」といいます。)が公表されています。本中間整理では、「国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護」について、「特許法において、実質的に国内の実施行為と認める要件を明文化する方向で、特許制度小委員会において、集中的に検討を深める必要がある。なお、この際、最高裁に上告中のドワンゴ対FC2事件の状況を注視すべきである。」との見解が示されました(本中間整理6頁)。
本小委員会では、このような本中間整理での議論を踏まえ、検討が行われました。具体的には、「特許制度等に関する検討課題について」と題する資料(以下「本資料」といいます。)に基づき、特許庁から説明がなされました。その後、委員から、①実質的に国内の実施行為と認める要件を明文化する方向性の是非、②当該要件の具体的内容等について、活発な議論が交わされました。本小委員会において、各委員から様々な意見が示されたところ、①については、明文化する方向性で良いという意見が比較的多かったように思います。もっとも、いずれの点についても即座に結論に至るような論点ではなく、引き続き議論することとなっております。令和6年12月~令和7年1月頃に開催することが予定されている次回の特許制度小委員会において、本小委員会で委員から示された指摘等に対して、事務局の特許庁から回答を示すこととなっております(本資料36頁)。
法改正は、通常、法律案の原案作成、内閣法制局における審査、国会提出のための閣議決定、そして国会における審議という過程を踏みますが、上記の小委員会のスケジュールを踏まえますと、来年の国会への提出は間に合わないと思われますので、この点に関する法改正が国会で審議されるのは、再来年以降となるのではないかと思われます。
なお、「2. DX時代にふさわしい産業財産権手続に関する制度的措置について」についても事務局から説明が行われ、複数の委員から意見が示されました。この点の詳細については、特許庁のホームページで今後公開される議事録をご参照いただければ幸いです。
おわりに
上記のとおり、「実質的に国内の実施行為と認める要件を明文化する」特許法の改正に関して、本小委員会において、当該要件の具体的な内容等につき、今後も重要な議論がなされるものと考えられます。より良い知的財産制度の実現に向けて、弊職らも尽力してまいりますとともに、進展がございましたら本ブログでご報告させていただく所存ですので、引き続きどうぞ宜しくお願い申し上げます。