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第56回特許制度小委員会(2026年6月16日)の審議について
2026.06.23
はじめに
2026年6月16日、産業構造審議会知的財産分科会第56回特許制度小委員会が開催され、特許制度に関する検討が行われました。本稿では、特許制度小委員会の委員を拝命している松山智恵とオブザーバーとして参加している齋藤俊より、第56回特許制度小委員会における審議の内容について、簡単にご紹介いたします。
議論の内容
第56回特許制度小委員会では、以下3つの議題について議論が行われました。
- 国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護
- AI技術の発達を踏まえた特許制度上の適切な対応
- 知的財産の侵害抑止へ向けた取組
特に、「3. 知的財産の侵害抑止へ向けた取組」では、以下にご紹介するように、様々な統計が掲載されており、事業者の皆様にとってもご参考になるような内容でした。
以下、それぞれの概要をご説明いたします。
1.国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護
国際的な事業活動におけるネットワーク関連発明等の適切な権利保護については、これまでの特許制度小委員会において、「拙速なルール化を避けつつ柔軟な対応が可能な措置として、『考え方の整理』を作成・公表する方向性」となり、当該考え方の整理について議論が行われました(特許庁「特許制度に関する検討課題について」(以下「本資料」といいます。)2頁)。なお、この「考え方の整理」は、知財ユーザーが、権利行使をする、サービスの提供をする、出願をするというような様々な場面で参考にできるようにすることを目指して作成されるものです。
今回の小委員会では、「実質的に国内の実施行為か否かが問題となり得る被疑侵害行為の類型」(本資料7頁等)が提示され、このような類型に分けて整理するということが適切であるか等について議論がなされました。その他の点も含め、議論の詳細は、特許庁のホームページで今後公開される議事録をご参照いただければ幸いです。
今回の議論を踏まえて、今後も引き続き「考え方の整理」について検討が進められます。
2.AI技術の発達を踏まえた特許制度上の適切な対応
AI技術の発達を踏まえた特許制度上の適切な対応については、これまでの特許制度小委員会では、「①発明、②発明者、③引用発明適格性の3つの論点等について検討を行って」おり、本小委員会の議論を踏まえ、特許庁において「ヒアリングや諸外国の動向調査等」を行った結果が示されております(本資料14~22頁)。
今回の小委員会では、特許庁による当該ヒアリング等の結果が報告されるとともに、AIの技術水準が急速に変化し続けている実情も踏まえ、引き続き調査・検討を行うこと自体には賛成の意見が多く、他方で、調査等を続けるのみならず、それと並行して、現時点での考え方を整理して何らかの形で公表することも必要なのではないかという意見もありました。
3.知的財産の侵害抑止へ向けた取組
知的財産の侵害抑止へ向けた取組では、特許庁の調査結果や統計情報について説明がありました。特許庁の調査結果は、例えば以下のとおりです(本資料26-27頁、29頁、36頁)。
- 「他者特許権に基づく警告や訴訟提起を受けた経験があると回答した企業は6割以上」であること
- 「クリアランス調査を行っている旨回答した企業は9割以上」であること
- 「特許表示等を行っているとの回答は全体の約4割であった」こと
- 被疑侵害者が「特許権の存在を知った上でなお侵害していた」と思ったことがあると回答した企業が67.2%であること
- 裁判外紛争解決手続(ADR)について、利用したことがある企業は2.4%であったこと
また、特許法第102条に係る令和元年法改正前後の裁判例比較では、以下の結果となったとのことです(本資料32頁)。

このように、令和元年法改正後は、損害賠償の認定額や相当実施料率等が増加したことが伺えます(ただし、特許庁からは、法改正との因果関係は不明とのコメントがありました。)。
また、特許法第102条第2項に関し、損害額推定の覆滅について、以下の図とともに、覆滅率※の年別平均が増加傾向にあるとの分析が示されました(本資料35頁)。
※小委員会において、特許庁から大合議判決前の覆滅率には寄与率も含めているとの補足説明がありました。

今回の小委員会の議論では、悪質な侵害が疑われる事案について何かできることがあるのか、また、更に損害賠償額が高額となるような法制度が必要か、必要である場合には、利益吐き出し型の損害賠償制度が考えられるのではないか等について議論があり、この論点が今後の法改正につながるか否かが注目されます。
おわりに
上記のとおり、今回の特許制度小委員会では3つの議題について議論が行われたところ、いずれの議題でも、すぐに法改正を行うべきとの結論までには至らず、引き続き議論を行うこととなりました。もっとも、特に「3.知的財産の侵害抑止へ向けた取組」については、様々な統計情報等が本資料において整理をされており、事業者の皆様にとってもご参考になるような内容であったものと存じます。なお、次回の特許制度小委員会の開催予定日時は、令和8年秋頃を想定とのことです(本資料40頁)。
より良い知的財産制度の実現に向けて、弊職らも尽力してまいりますとともに、進展がございましたら本ブログでご報告させていただく所存です。

