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【宇宙ビジネスと宇宙法②】新規参入前に知るべき国際宇宙法
2026.10.30
はじめに
近年、日本において、多種多様な宇宙ビジネスが登場し、活況を呈しています。そして、宇宙ビジネスに新規参入を行うにあたっては、国際宇宙法の基本的な内容を踏まえることが望ましいです。
そこで、本稿では、多岐にわたる宇宙関連案件に関与してきたTMI総合法律事務所の弁護士が、新規参入前に知るべき国際宇宙法について概説します。
宇宙の開発及び利用に関する諸条約
国際宇宙法には、宇宙分野の条約、国際慣習法等が含まれるところ、日本の宇宙ビジネスとの関係で特に重要なのが、以下の4条約です。
- 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(宇宙条約)
- 宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定(宇宙救助返還協定)
- 宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約(宇宙損害責任条約)
- 宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約(宇宙物体登録条約)
これらの4条約は、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(以下「宇宙活動法」といいます。)において、「宇宙の開発及び利用に関する諸条約」と定義されています(同法第2条第1号)。そして、同法に基づく人工衛星等の打上げに係る許可や、人工衛星の管理に係る許可の審査に当たっては、「人工衛星の利用の目的及び方法が……宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施……に支障を及ぼすおそれがないものであること。」が審査されます(同法第6条第4号、第22条第1号)。また、宇宙活動法第32条は、「内閣総理大臣は、……打上げ実施者、第十三条第一項の型式認定を受けた者、第十六条第一項の適合認定を受けた者又は人工衛星管理者に対し、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施……の確保を図るため、必要な指導、助言及び勧告をすることができる。」と規定し、これらの条約に関連して指導等も行われる可能性があります。
そのため、日本において宇宙ビジネスに参入するにあたっては、国際宇宙法の中でも特に、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の内容を把握することが望ましいです。
そこで、本稿では、これらの条約の概要について、第1回よりも詳細に説明します。
宇宙条約
宇宙条約は、その名のとおり宇宙空間の探査及び利用に関する様々な原則を定める条約であり、「宇宙の開発及び利用に関する諸条約」の中でも最も重要な条約です。
宇宙ビジネスとの関係で重要なのが、宇宙条約第6条です。同条は、以下のとおり規定します。
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条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間における自国の活動について、それが政府機関によつて行なわれるか非政府団体によつて行なわれるかを問わず、国際的責任を有し、自国の活動がこの条約の規定に従つて行なわれることを確保する国際的責任を有する。月その他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。 |
本条の規定に基づき、例えば、日本は、会社や大学等の非政府団体による宇宙空間における自国の活動についても、国際的責任を負うことになります。また、本条第2文の規定を踏まえ、宇宙における非政府団体の活動について、日本が許可及び継続的監督を行うために、宇宙活動法等が制定されています。
その他、宇宙条約は、例えば以下の重要な原則を定めています。
- 宇宙の探査及び利用の自由等(第1条)
- 国家による宇宙空間の取得の禁止(第2条)
- 国際法の遵守等(第3条)
- 大量破壊兵器の地球周回軌道等への配備の禁止、天体の平和的目的での利用等(第4条)
- 他の当事国の利益への妥当な考慮、有害な汚染等の防止、国際的協議等(第9条)
なお、宇宙活動法において、人工衛星の管理に係る許可の基準を定める第22条第2号から第4号までにおいて、宇宙条約「第9条に規定する月その他の天体を含む宇宙空間の有害な汚染並びにその平和的な探査及び利用における他国の活動に対する潜在的に有害な干渉」(「宇宙空間の有害な汚染等」)について言及があり、当該基準との関係でも宇宙条約は重要です。
宇宙救助返還協定
宇宙救助返還協定は、宇宙船の乗員の救助及び送還、宇宙空間に打ち上げられた物体の返還等について定める条約です。本条約は、宇宙条約の義務の内容を充実させ、一層具体化するために策定された条約です(本協定前文)。本協定は、その名のとおり、限られた内容を取り扱っている条約です。
宇宙損害責任条約
宇宙損害責任条約は、人工衛星等の宇宙物体による損害についての責任等を定める条約であり、宇宙条約第7条の規定を詳細化した条約です。宇宙損害責任条約は、その締約国である打上げ国(以下「打上げ国A」という。)の宇宙物体が引き起こした以下の損害について、打上げ国Aの賠償責任等について定めています。

① 地表において引き起こした損害
② 飛行中の航空機に与えた損害
③ 地表以外の場所において他の打上げ国の宇宙物体又はその中の人若しくは財産に対して引き起こした損害
この場合、打上げ国Aは、①及び②の損害については無過失責任、③の損害については過失責任を負うことになります(宇宙損害責任条約第2条、第3条)。
本条約は、民間企業に直接損害賠償責任を発生させるものではありませんが、宇宙ビジネスにおいて損害賠償責任が発生するか否かを検討するにあたっては、同条約の内容を把握する必要があります。
宇宙物体登録条約
宇宙物体登録条約は、宇宙物体が地球を回る軌道又は地球を回る軌道の外に打ち上げられたときの国際的な登録制度等について定めています。なお、本条約は、上記の他の条約と同じく締約国の義務について規定するものであって、事業者の義務について規定するものではありません。そのため、実務的には、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の「宇宙物体登録に係る届出マニュアル」の内容を把握することのほうが重要です。
おわりに
本稿では、新規参入前に知るべき国際宇宙法として、国際宇宙法の中でも特に重要である、「宇宙の開発及び利用に関する諸条約」について概略いたしました。宇宙ビジネスに新規参入を行うにあたっては、宇宙の開発及び利用に関する諸条約をはじめとする国際宇宙法を踏まえつつ、宇宙活動法に基づく許可を取得することができるか等について検討が必要となる場合があります。
また、第1回でご説明したとおり、これらの条約の解釈等について、様々な国連決議やガイドライン等が作られており、宇宙ビジネスの内容によっては、これらの決議等の内容を踏まえることが重要になる場面も想定されます。
本連載の最新情報や関連トピックは、こちらのページのほか、以下のTMI総合法律事務所公式Xアカウントでも発信していますので、是非ご覧ください。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
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