ブログ
【障害福祉】障害者差別解消法(5) 環境の整備
2026.03.06
5回目となる今回は、2024年4月1日に施行された改正法後も引き続き民間事業者が努力義務を負うこととなっている環境の整備についてご説明します。
環境の整備とは
障害者差別解消法5条は、行政機関等と民間事業者に対して、それぞれ、環境の整備を行う努力義務を課しています。環境の整備について定義等は特に設けられていませんが、内閣府が作成した、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」といいます。)」の「概要」においては、「合理的配慮を行うための、主に不特定多数の障害者に向けた事前的改善措置等」と書かれており、基本方針の本文では具体的に以下のとおり説明されています。
法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。
※障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定)
・概要
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/r05/pdf/gaiyo.pdf
・本文
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/r05/pdf/honbun.pdf
障害者差別解消法が定める3つの義務(不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供、環境の整備)の違いを、イメージしやすくするために具体例を挙げると、以下のようになります。
ケース:店の前に車椅子使用者が乗り越えられない段差があって、店に容易には入れない場合
【不当な差別的取扱いの禁止】
障害者であることを理由に入店を断ることは許されない。
【合理的配慮】
車椅子使用者から個別に意思の表明があった場合に、一時的に折り畳み式スロープを開いてスロープを設置する。
【環境の整備】
車椅子使用者からの要望に関係なく、あらかじめスロープを設置したり、折り畳み式を購入しておく。
対象となる事業者の範囲
基本方針によれば、障害者差別解消法の対象となる事業者は、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者です。そのため、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となり、また対面やオンラインなどサービス等提供形態の別を問いません。
環境の整備の内容(具体的事例)
環境の整備は前述のとおり、障害者からの意思の表明を前提とするわけではなく、障害者の使用等を想定してあらかじめ社会に存在する障壁を取り除く取組みであるため、様々なものがこれに該当します。その中には、設備の改善や機器の導入といったハード面の取組みだけでなく、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれます。また、合理的配慮と同様に、技術の進歩により対応の幅も広がってくるため、技術進歩の動向を踏まえた取組みが期待されるところです。内閣府の提供する障害者差別解消に関する事例データベース(https://jireidb.shougaisha-sabetukaishou.go.jp/)には、環境の整備の具体例が掲載されていますので、参考にすることができます。
(環境の整備の具体例)
【視覚障害】
受付方法が、モニターを見ながら自分で入力する仕組みになっている場合に、視覚障害者も利用できるように新たにハンドセット(受話器)付きの受付機器を導入する。
【肢体不自由】
飲食店のカウンター席が固定椅子であるため、車椅子のままでは着席できない場合に、車椅子のままでも着席できるよう、カウンター席の一部を改装し、入口に近い位置にある席の一部を可動椅子に変更する。
【聴覚・言語障害】
受付窓口での順番の呼び出しが音声のみの案内となっており、聴覚障害のある方に伝わらないので、音声以外の案内方法として順番になると振動してお知らせする機器を導入する。
【全般】
自社ウェブサイトのウェブアクセシビリティを向上させる。
※ウェブアクセシビリティとは、利用者の障害の有無や程度、年齢や利用環境にかかわらず、あらゆる人がウェブサイト上の情報やサービスを利用できること、又はその到達度を意味します。一般的に、ウェブアクセシビリティが確保されたウェブサイトでは、具体的には以下のようなことが行えます。
・目が見えなくても情報が伝わること・操作できること。
・キーボードだけで操作できること。
・一部の色が区別できなくても得られる情報が欠けないこと。
・音声コンテンツや動画コンテンツで、音声が聞こえなくても話している内容が分かること。
合理的配慮の提供を容易にするためのものとして
環境の整備はあくまでも不特定多数向けに、設備や組織・人員等の確保など対応体制面の事前の改善措置を行うものですが、合理的配慮は、その環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置とされています。
したがって、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や障害者との関係性が長期に亘る場合は、その都度合理的配慮を提供するよりも、環境の整備を行っておくこと手間や費用等の観点から効果的です。
ブログシリーズ「障害者差別解消法」
第1回:障害者差別解消法(1)障害者差別解消法の概要
第2回:障害者差別解消法(2)対象となる「障害」の種別①
第3回:障害者差別解消法(3)対象となる「障害」の種別②
第4回:障害者差別解消法(4)合理的配慮
第5回:障害者差別解消法(5)環境の整備 ←今回はこちら
ブログシリーズ「障害福祉」一覧ページはこちら



