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【障害福祉】障害者差別解消法(6) 不当な差別的取扱いの禁止
2026.07.17
6回目となる今回は、障害者差別解消法における不当な差別的取扱いの禁止についてご説明します。
不当な差別的取扱いの禁止とは
障害者差別解消法は、行政機関等と民間事業者に対し、障害を理由として不当な差別的取扱いをすることを禁止しています(行政機関等につき7条1項、民間事業者につき8条1項)。
「不当な差別的取扱い」とは、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービスや機会の提供を拒否したり、場所や時間帯などを制限したり、障害のない人には付さない条件を付けたりすることをいいます(「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」といいます。)第2の2(1))。
※障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定)
・概要
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/r05/pdf/gaiyo.pdf
・本文
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/r05/pdf/honbun.pdf
対象となる事業者の範囲
基本方針によれば、障害者差別解消法の対象となる事業者は、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者です。そのため、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となり、また、対面やオンラインなど、サービス提供形態の別を問いません。
不当な差別的取扱いの考え方
不当な差別的取扱いに該当するか否かは、①「障害があること」を理由として不利な取扱いをしているか、②その取扱いに「正当な理由」があるか、という観点から判断されます。
例えば、以下のような取扱いは、①「障害があること」を理由として不利な取扱いをしているものとして、不当な差別的取扱いに該当する可能性があります。
- 車椅子利用者であることのみを理由に、飲食店への入店を断る。
- 聴覚障害者に対し、筆談やチャット等によるやり取りが可能であるにもかかわらず、「電話ができない方とは契約できません」として契約を断る。
- 発達障害のある方に対し、「トラブルになりそうだから」という抽象的な理由だけでサービス利用を断る。
- 視覚障害者に対し、介助者が同伴しているにもかかわらず、「危険だから」として施設利用を一律に断る。
- 精神障害のある方に対し、他の利用者には求めていない保証人や追加書類の提出を一律に求める。
もっとも、例えば、利用者本人や第三者の生命・身体・財産の保護のために必要であり、かつ、その必要性について客観的に説明できる場合には、②「正当な理由」があると認められ、不当な差別的取扱いに該当しないと判断される可能性があります。
基本方針では、「正当な理由」があるか否かについて、個別の事案ごとに、以下のような事情を踏まえて、(1)目的が正当か、(2)その目的に照らして当該取扱いがやむを得ないといえるか、という観点から判断するものとされています(基本方針第2の2(2))。
- 障害者、事業者、第三者の権利利益
例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等 - 問題となっている事務・事業の目的・内容・機能の維持等
したがって、「前例がない」「対応方法が分からない」「他のお客様との公平性が心配」といった理由だけでは、通常、「正当な理由」があるとはいえません。
また、正当な理由があると判断した場合でも、その理由を障害者本人に丁寧に説明し、理解を得るよう努めることが重要です(基本方針第2の2(2))。
なお、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることには留意が必要です。合理的配慮の提供については本ブログシリーズ第4回「障害者差別解消法(4)合理的配慮」で解説していますので、必要に応じてご参照ください。
不当な差別的取扱いの内容(具体的事例)
不当な差別的取扱いに該当するか否かは、個別の事案ごとに、具体的な事情を踏まえて判断されます。そのため、実際の判断が容易でない場合もあります。
この点、基本方針では、「正当な理由なく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例」と、「正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例」として、以下の事例が挙げられており(基本方針第2の2(2))、参考になります。
【正当な理由なく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例】
-
- 障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否すること。
- 業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障害者でない者とは異なる場所での対応を行うこと。
- 障害があることを理由として、障害者に対して、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げること。
- 障害があることを理由として、具体的場面や状況に応じた検討を行うことなく、障害者に対し一律に保護者や支援者・介助者の同伴をサービスの利用条件とすること。
【正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例】
-
- 実習を伴う講座において、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障害特性のある障害者に対し、当該実習とは別の実習を設定すること。(障害者本人の安全確保の観点)
- 飲食店において、車椅子の利用者が畳敷きの個室を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための対応を行うこと。(事業者の損害発生の防止の観点)
- 銀行において口座開設等の手続を行うため、預金者となる障害者本人に同行した者が代筆をしようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の取引意思等を確認すること。(障害者本人の財産の保全の観点)
- 電動車椅子の利用者に対して、通常よりも搭乗手続や保安検査に時間を要することから、十分な研修を受けたスタッフの配置や関係者間の情報共有により所要時間の短縮を図った上で必要最小限の時間を説明するとともに、搭乗に間に合う時間に空港に来てもらうよう依頼すること。(事業の目的・内容・機能の維持の観点)
また、内閣府の提供する「障害者差別解消に関する事例データベース」にも、不当な差別的取扱いの事例が掲載されており、参考になります。
※障害者差別解消に関する事例データベース
https://jireidb.shougaisha-sabetukaishou.go.jp/
実務上の留意点
民間事業者においては、従業員個人の思い込みや過度な安全配慮により、結果として不当な差別的取扱いに該当する行為を行ってしまうケースがあります。
例えば、「危ないから」「対応できないから」「他のお客様に迷惑がかかるかもしれないから」といった理由だけで一律に利用を断るのではなく、まずは本人の状況を確認し、代替手段や合理的配慮の可能性を検討することが重要です。
また、現場任せにせず、以下のような体制整備を行うことも有効です。
- 障害者対応に関する社内マニュアルを作成する。
- 従業員向け研修を実施する。
- 判断に迷った場合の相談窓口を設ける。
- 過去の対応事例を蓄積し、社内で共有する。
- 合理的配慮や環境の整備とあわせて、障害者対応全体を見直す。
不当な差別的取扱いの禁止は、「障害者を特別扱いすること」を求めるものではなく、障害があることのみを理由として不利益を与えないことを求めるものです。実務上は、障害の有無だけで一律に判断するのではなく、個別の事情を踏まえて丁寧に検討し、必要に応じて本人との対話を行うことが重要といえます。
ブログシリーズ「障害者差別解消法」
第1回:障害者差別解消法(1)障害者差別解消法の概要
第2回:障害者差別解消法(2)対象となる「障害」の種別①
第3回:障害者差別解消法(3)対象となる「障害」の種別②
第4回:障害者差別解消法(4)合理的配慮
第5回:障害者差別解消法(5)環境の整備
第6回:障害者差別解消法(6)不当な差別的取扱いの禁止 ←今回はこちら
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